2 a/dコンバータ(ltc1098) このa/dコンバータは北海道立理科教育センターが平成5年度長期研修員の田中佳典先生, 北海道高等学校理科研究会の菅原陽先生,萬木貢先生らの協力の下に製作した逐次比較型の8 ビットa/dコンバータで電源電圧3〜9vで作動し,回路電流も小さいため,パソコンから 電源を得て使用することができる。またこの回路は以前報告した2チャネルa/dコンバータ (図7b)の姉妹品で仮グランドを持ち,+−の電位を測定することができる。しかも変換速度が 29μsと速いため音声の取り込みも可能である。このボードを作動させるソフトは従来は ms―dos上で制御していたが,delphiという言語で実行型のファイルを作成したため windows上で制御することができるようになり,低価格で作製できることとあいまって活用範囲 が飛躍的に拡大した。 (1) a/d変換のための機器構成 使用機種 nec9801シリーズ,nec9821シリーズ,pc/at互換機 接続端子 プリンタ端子 オペアンプ tlc27l2 プログラム ms-dos上でn88basic,windows95上ではdelphi(pascal,assembler)を使用 このボードは,汎用性を高めるため,ltc1098に高入力インピーダンスのオペアンプ tlc27l2を接続し,パソコンにはプリンタ端子を通して信号の交換を行う。 (2) ltc1098の主な特徴 ltc1098には次のような特徴がある。 @ 作動させるためには3〜5vの間の電源電圧を供給しなければならない。このとき,フルス ケールは電源電圧と同じである。 A 消費電力が小さく,パソコンから電源を供給することができる。 B あまり大きな電流をセンサーに供給することができない。 C 入力チャンネル数は,シングル2チャンネルと差動1チャンネルがソフト上で選択きる。 D 入力インピーダンスが大きくセンサーの電圧を直接測定することができる。 E サンプルアンドホールドが内蔵されている。 F 価格はdip品で1個800円くらい G 測定データは8ビットのシリアルデータとして送出する。 (3) a/dコンバータ:ltc1098 ltc1098のトップビューは図5のとおりである。 図5 ltc1098 top view ltc1098を作動させるためには, 8.vcc(作動させるための電源)の他, 1.cs(チップセレクト),5.din(データイン),7.clk(クロック)への出力端子と 6.dout(データを受け取る)からのの入力端子が必要である。 (4) プリンタ端子との接続 通常,パソコンにはプリンタを接続するためのプリンタ端子がついていて,ほとんどがセントロ ニクス社が定めた規格に準拠している。プリンタ端子の各ピンのうち,データ有効フラッグ(pstb) に1点(端子1),データ転送用(data)に8点(端子2,3,4,5,6,7,8,9),データ転送許可フラッグ(busy) に1点(端子11),グランド(gnd)に1点(端子19)が割り当てられている。すべての信号は,0〜5v のttlレベルで転送されており,その速度は毎秒数十万バイトと高速である。 表1 プリンタポートの使用方法(nec98シリーズ) パソコンへの接続は次のように行い,計測したデータはベーシックまたはパスカルのプログラ ムでパソコンのプリンタ端子から読み取る。 (5) プリントパターン 図7‐a a/dコンバータプリントパターン(1チャネル増幅,底上げ用) 図7‐b a/dコンバータプリントパターン(2チャネル増幅,差動用) (6) 回路図 図8‐a a/dコンバータ(ltc1098)及びオペアンプ部回路図 (1チャネル増幅,底上げ用) 図8‐b a/dコンバータ(ltc1098)及びオペアンプ部回路図 (2チャネル増幅,差動用) (7) オペアンプによる増幅 オペアンプには消費電力が小さく,入力インピーダンスが大きいtlc27l2(テキサスインスツルメンツ) を使用した。このオペアンプには2つの増幅器が内蔵されており,1チャンネルの入力を 1(1.5) 倍以上に増幅できるように非反転増幅回路で増幅回路を作成した。 増幅率は,a=1+100/r (rは100kΩ(または200kΩ)の可変抵抗) オペアンプの電源は3〜9vの間で正常に作動するが,この回路の場合,a/dコンバータ同様パソコン のプリンタ端子からとっているため,供給されている電圧は 5v弱程度である。ノートパソコンの場合は 3v強程度である。一般にオペアンプで増幅した後の電位の上限は供給電源の70%くらいであるので,この 回路の場合,増幅後の電位の上限は3.6vくらいである。 (8) オペアンプによる上げ底(仮グランド) 1個のオペアンプで図9のように底上げ(0〜2.5v)をして仮グランドを作っているので, +と− の電圧を出力するセンサーを仮グランドと入力(1チャネル)に接続することで電圧の測定が可能である。 また増幅は仮グランドを基準にしてなされる。センサーから大きな電流が流れこむと仮グランドが不安定 になることがあるので,使用するセンサーの特性に注意を払う必要がある。 図9 オペアンプ部の回路(1チャネル増幅,底上げ用) (9) ltc1098の優位点 リニアテクノロジーのltc1098は消費電力が小さく,パソコン本体から作動電源を供給 することが可能である。このa/dコンバータは逐次変換方式で,サンプルアンドホールド内蔵 の8ビットa/dコンバータで,2チャンネルをソフトウエアで切り替えて使用することができる。 また,diffモードでは,ch0とch1の間の電位差をソフト上で極性を選択の上測定することができる。 作動時の電流は80μa,非作動時にはcsをhにしておくと3μaに低下する。電源は 3〜5vの単 一電源で作動し,最大クロックは500khzで,このときの変換時間は16μsである。入力インピーダ ンスが高く,各種センサを直接接続することが可能である。 〔参考文献〕 ・中村隆信,田中佳典 ltc1098を用いた科学計測 北海道立理科教育センター研究紀要第5号 1993 ・中村隆信,萬木貢 ltc1098を用いた簡易型a/d変換ボードの製作と化学実験教材 日本化学会第67春季年会講演予稿集T 1994 ・大久保政俊 物理におけるコンピュータの活用 全国理科教育センター研究発表会(物理) 1998 次へ進む 前に戻る 理科におけるコンピュータの活用へ