windows上での計測・制御 ねらい 計測にコンピュータを利用すると,高速でデータを取り込んだり,長時間にわたってデータを 取り込んだりできるメリットがある。また、計測したデータを実験の操作を行いながら処理して グラフ化し、データの科学的な意味を理解しやすい形で表示することもできる。さらに,ディス プレー上に表示されているグラフをプリントしたり,実験データを実験と同時に自動的に記録する こともできる。ここではadコンバータを製作し,それを用いてwindows上での計測・制御について 学習および実習する。 1 コンピュータ計測の仕組み (1) 計測におけるパソコンの機能と構成 パソコン本体にはcpuとメモリーが装備されている。cpuはシステムの中心で、演算機能 や制御機能を持っている。cpuから出ているバスラインにはいろいろな構成要素(メモリーや キーボード,rs−232cなど)が接続されている。(図1) パソコンに計測データを入力するには,拡張スロット,プリンタ端子,マウス端子,rs− 232c端子などを活用する方法がある。 図1 コンピュータの構成要素と出入力装置 科学実験で測定する物理量には電圧,温度,変位,圧力,光度などがある。コンピュータが処理でき るのは電圧なので,電圧以外の量を測定するには,それらの物理量を電圧に変換する装置が必要となる。 その装置がセンサーである。例えば、温度センサーは温度変化に対応した電圧が出力され,圧力センサ ーは圧力変化に対応した電圧が出力される。コンピュータ計測ではパソコンを動かすプログラムの他に, これらのセンサーから得られる電圧をパソコンに取り込むためのa/d変換装置が必要である。 (2) a/dコンバータ 図2 a/d変換模式図 各種実験で計測にコンピュータを活用する場合,センサーを利用して計測する物理量を電圧に変換し, パソコンに入力する。しかし,センサーからの電圧はアナログ量なので、パソコンが読み取るにはパソ コンが読み取れるデジタル量に変換しなければならない。そのためには,パソコンとセンサーの間に a/dコンバータという周辺機器が必要である。 a/dコンバータには拡張スロットに装着するボードタイプのもの(パラレル方式)から,rs− 232cやプリンタの端子に装着する簡易型のものまでいくつかの種類がある。rs−232cを用 いるa/dコンバータとしてad−232(パピー製販株式会社),さんご(すずき教育ソフト), パソリカ(マリス)等が市販されているが,データの取り込み方法はそれぞれ異なっている。 ここでは,自作可能でプリンタ端子に装着する安価な簡易型のa/dコンバータとして,リニア テクノロジー社のltc1098を用いたa/dコンバータの活用について紹介する。 (3) a/dコンバータの種類 a/dコンバータには,測定データを送出する方法がパラレル(並列)のものとシリアル(直列)の ものの2種類がある。パラレル型はビットパターンに対応する複数の線を並べて,一度にデータを送る ので伝送速度は速い。拡張スロットやプリンタ,ディスクドライブ等のインタフェースは大抵パラレル である。シリアル型は1本の信号線だけでビットパターンを前からまたは後ろから順に並べて1ビット ずつデータを複数回に分けて伝送するので伝送速度は遅い。rs−232cやプリンタ端子に接続する 簡易型a/dコンバータはこのタイプが多い。 (4) a/dコンバータの変換方法 自然界の存在する物理量は,ほとんどがアナログ量である。そのアナログ量をディジタル量に変 換してコンピュータに取り込むのがadコンバータである。 アナログ量をディジタル量に変換する方法としては,@並列比較型,A逐次変換型,B積分型がある。 ここではA逐次変換型を説明する。 逐次変換型は比較電圧を数回出力し,入力電圧に等しいものに蓄積していく方法で,よく天秤にたとえ られる。天秤の場合は,試料の重さを重い分銅から比較していき,常に試料より軽くなるようにして少し ずつ分銅を加え,分銅との釣り合いから試料の重さを求める。それと同じことを電気的におこなう。 例えば8ビットのadコンバータの場合は28 =256通りの比較電圧が必要になる。この電圧を少し ずつ変換させていたのでは変換に時間がかかってしまう。そこで逐次変換方式では比較電圧を作成して 入力電圧と比較する。 これは128,64,32,16,8,4,2,1という具合に1/2ずつ重みの異なるデータ(合計255)をもとにその組 み合わせで入力値を求める。最初128を比較値とし,比較値が入力値より小さければ,比較値を順次加算 して次の比較電圧として入力値と比較していく方法である。 例えば入力値が53の場合 32+16+4+1=53という具合になる。 たった8回の比較で255分解能の測定をすることができる。これらの一連の操作はadコンバータのic 内部で行われる。8ビットのadコンバータを用いて0〜5vの入力電圧を測定する場合,0〜5vを255(=28−1) に区切られ,分解能は5/255=0.0196=19.6mvとなる。 (5) a/dコンバータのデータ転送 データの送信は信号線に流れる電気の電圧の高低を利用して行われる。パソコンが扱うデジタルデータは 「0」か「1」である。 0:低電圧(l:ロー)レベル 1:高電圧(h:ハイ)レベル シリアル伝送では,データの受信はビット情報の存在する時間位置と時間間隔の情報が必要であり,定めら れたクロックで受信信号からビット情報を抽出する。下記の例のように伝送信号とクロック信号を一緒に受信側 に送ると容易にビット信号を復元できる。(同期方式) 図3 信号線の電圧変化とクロックパルス データはスタートビットに続いてmsbから順に送り出されてくるので,8回繰り返して読みだし,その 結果から各ビットの重みを計算して測定値を求める。 図4 信号線の変化とデジタル情報 (6) windows95上で使用可能なadコンバータ (北海道立理科教育センターでdelphiにより作成したプログラムで動作可能確認済み) 〔参考文献〕 パソコンを活用した理科の実験 万能a−dコンバータの製作 岩手県立総合教育センター 1995年 高等学校の理科実験におけるコンピュータの活用 三重県総合教育センター 1996年 研究紀要 第9号 コンピュータの計測・制御的な活用の研究 千葉県情報教育センター1995年 次へ進む 前に戻る 理科におけるコンピュータの活用へ