4.結果と考察
 (1) ピストンを押して気体を急に圧縮すると,その瞬間,二酸化窒素の濃度は大きくなり,褐色は濃くなる。
     したがって,シリンジを透過する光量は減少し,コンピュータ画面のグラフは急激に下降する。ここで
     時間の経過にともない平衡移動が起こり,二酸化窒素の濃度は減少するため,シリンジを透過する光量は
     増加し,コンピュータ画面のグラフは徐々に上昇する。この上昇が,時間の経過とともに変化量が減少し
     ていることがグラフから読みとれる。これは肉眼での観察では判別できないことであり,コンピュータを
     利用することによってはじめてわかることである。(図6)
 (2) ピストンを引き上げて気体を急に膨張させると,その瞬間,二酸化窒素の濃度は小さくなり,褐色は薄く
     なる。したがって,シリンジを透過する光量は増加し,コンピュータ画面のグラフは急激に上昇する。
     ここで時間の経過にともない平衡移動が起こり,二酸化窒素の濃  度は増加するため,シリンジを通過
     する光量は減少し,コンピュータ画面のグラフは徐々に下降する。(図6)
   ここでも,時間の経過とともに変化量が小さくなっていることがグラフから読みとれる。

     

                           図6 外部からの圧力の変化によるno2-n2o4の平衡移動


V おわりに
  コンピュータを利用することで,肉眼での観察では判別できない変化量をリアルタイムでコンピュータ画面に
  表示させることができ,そこから平衡移動の本質を読みとることが可能になる。
  
W 註
 (1) 制御画面とグラフ画面を別々に表示できる。また,データを補正して実験値に換算して表示でき,実験値・
    時間についても任意の大きさで表示できる計測ソフトである。理科教育センターの大久保研究員(理科教育
    センター)が開発した。
  (2) プリンターポートに接続し,電源はパソコンから供給される。オペアンプを使って,増幅および底上げを
     行い,正負の電圧を取り込める。田中佳典教諭(旭川東光中),萬木貢教諭   (旭川東高),菅原陽教諭
    (札幌南陵高)の協力を得て理科教育センターが開発した。
  (3) 発光ダイオードを利用した簡易光電比色計。萬木貢教諭(旭川東高),菅原陽教諭(札幌南陵高)が中心
    になって開発した。

X  参考
  1)  1998.8.25〜26
      平成10年度 情報教育指導者講座 高等学校理科 発表 (於 理科センター)
  2)  1999.10.21  
      平成11年度 全国理科教育センター研究協議会並びに研究発表会化学部会(第37回) 発表(於 神戸市)
       

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