バンジージャンプ方式による無重力実験学習





永田  敏夫  大久保  政俊  村上  俊一  岡久  保幸  梅内  宏

青柳 明典  池田  和人  増田 智之  小野寺 俊博  柳田 英俊



(ながたとしお   物理研究室長)         (おおくぼ まさとし物理研究員)

(むらかみしゅんいち 元物理研究員)        (おかひさやすゆき 平成8年度長期研修員)

(うめないひろし 平成8年度長期研修員)  (あおやぎあきのり 平成8年度長期研修員)

(いけだかずひと  平成8年長期研修員)   (ますだともゆき 北海道奥尻高等学校教諭)

(おのでらとしひろ 様似町立様似中学校教諭)(やなぎだひでとし 夕張市立滝上小学校教諭)





 荷造り用の木枠にビデオカメラと落下実験容器を据え付け、自転車のゴムチューブを使った

バンジーコードをつけて屋上から落下させ、無重力状態を作り出し,「ばねにつけたおもり」,

「噴水」,「密度の異なる液体の境界」,「分銅と木片の落下」などのテーマについて無重力

実験を行った。さまざまな実験テーマを考えて実際に無重力状態でどうなるか試してみる科学

体験学習を中心にすえた無重力学習教材を開発したので報告する。



[キーワード] 理科教育 物理 無重力 バンジージャンプ 体験学習



1  はじめに

   子供たちに宇宙や科学に対する夢と希望を持たせることは、教育界の大きな使命である。

  北海道には炭坑立坑を利用した世界最大の微少重力落下実験施設が上砂川町にあり注目を集

  めている。これらの先端科学研究施設をもっと子どもたちの身近に感じるものとしたい。

  そこで,身近な器具を利用して落下運動による無重力の実験を行い,子供たちに重さのない

  空間を味わせ、宇宙や科学にたいする興味を高め、科学的な見方や考え方を育てることがで

  きないかと検討した。

    自由落下する容器内が無重力になることは知られているが,落下させた後の制動部分を手

  軽に行うことが従来解決できないでいた点を解決した。特に,製作が大がかりにならず,学

  校や科学館のようなさまざまなところで手軽で安全に繰り返し実験が行えることを心がけた。

 その一つが自転車のチューブを利用したバンジジャンプ方式であり,もう一つが小型のビデ

  オカメラによる実験のリアルタイムでの観察とビデオによる再現観察である。さらに,自分

  の考えた実験が無重力でどうなるか探求的に学習することができる。

   理科センターでの中学校・高等学校教員対象の講座での取り組み、青少年のための科学の

  祭典での子供にたいするデモ実験および北海道工業試験場と協力して一般市民に対して行っ

  た無重力公開実験などの実践状況も報告する。



2  実験装置

(1)  実験装置について

     実験装置は図1のような縦27p、横45p、高さ30pの荷積み用の木箱を使用した。中にス

   タンドとクランプでビデオメラを固定しまわりにスポンジを詰めて保護した。カメラの視野

   の範囲に入るように無重力実験容器を太い輪ゴムを利用して木箱の板に固定する。実験装置

   全体はバンジーコード(自転車のチューブ)につなぐ。



                   







 @せり出し

 Aバンジーコード

 Bひも

 C木枠

 Dビデオカメラ

 Eクランプ

 F落下実験容器

  a)ゴム栓

  b)アクリル管

  c)床引き下げ装置







              





     

          図1 落下実験装置の概要





             



        図2 落下実験容器の取り付け



     実験容器を太い輪ゴムを利用して木箱の板に固定する。実験装置全体はバンジーコード(自

   転車のチューブ)につなぐ。

(2)  落下方法

     実験装置を落下させたり引き上げたりする場合に装置が建物と接触して建物や装置が破損

   しないようにするため、装置を落下させる位置を建物から離し、空中へせり出させる必要が

   ある。図3のようにせりだしに実験装置を凧糸でぶら下げて屋上からせりだし、長い棒の先

   に付けたカッターで凧糸を切り離して落下させる。実験装置が地面に衝突しないように、あ

   らかじめ自転車のゴムチューブを15本つないで作ったバンジーコードの長さを調整してお

   く必要がある。3階建ての理科教育センターの屋上(高さ11m)から落下させると、バンジ

   ーコードの伸びによる制動の距離が約3mで,約5mの自由落下により無重力状態の継続状

   態は約1秒である。



    

   

     

 



                          図3 落下実験の様子



(3)  実験記録の方法

     はじめ,8oビデオ本体を実験装置に載せて落下させた後、回収して再生し観察する方法

   を用いていた。しかし,この方法だと実験装置のセットが確かめにくいことと実際の落下中

   は観察できないため、撮影専用の乾電池式小型ccdカメラを落下装置にクランプで取り付け、

   オーディオ用コードを利用して映像と音声信号出力を地上のモニターテレビにつなぎ、地上で

  観察と記録を同時に行う方法も行った      

    

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